都心3区における価格上昇の加速傾向
近年、東京都23区内の中古マンション市場は、継続的な価格上昇傾向を示しています。特に、千代田区・中央区・港区のいわゆる「都心3区」においては、その伸びが一段と顕著です。
グラフ1.都心3区とそれ以外の区部:成約坪単価推移

グラフ1の価格推移を見てみると、都心3区を除いたその他の区部では、おおむね直線的かつ堅調な上昇を続けている一方で、都心3区においては価格が曲線的、すなわち加速度的に逓増しており、2025年5月末の時点では過去最高水準に達しています。このような勢いは、現段階ではまだ衰える兆しを見せておらず、依然として上昇トレンドの中にあると見ることができます。
価格上昇を支える背景要因
この価格上昇の背景には、さまざまな要因が複合的に作用していると考えられます。たとえば、都心部への人口集中の継続や、海外投資家からの需要の高まりなどが挙げられます。特に、都心3区は行政機関やビジネスの中心地としての地位に加え、再開発プロジェクトやインフラ整備が進行しており、それらが不動産価値を押し上げる要因として機能しています。
高価格帯成約件数の増加傾向
グラフ2.都心3区とそれ以外の区部:2億円以上のマンション成約数

さらに注目すべきは、グラフ2に示された「2億円以上の成約物件数」の推移です。このグラフからも分かるように、都心3区においても、それ以外の区部においても、近年2億円を超えるような高価格帯マンションの成約件数が大きく増加しており、この事は資本力を持つ国内外の富裕層を中心とした需要が強くなっていることを示しています。いわば、不動産市場における「富の集中」が進んでいる状況とも言えるでしょう。
2025年春に見られた成約数の急減
しかしながら、この上昇トレンドにも一時的な停滞の兆しが見られた時期があります。2025年4月において、2億円以上の高価格帯マンションの成約件数が急減した様子が観測されました。これは一見すると、強気な市場の中における予想外の変動のようにも思えますが、その背景には金融市場の動向が密接に関わっている可能性があります。
株価下落と富裕層の意思決定の関係
実際、2025年3月下旬から5月にかけての日経平均株価は、下落基調の中で激しい乱高下を伴いながら推移しており、投資家心理に不安を与える局面が続いていました。そして、この不安定な状況が一段落し、株価が通常水準に戻る時期と、2億円超の成約件数が復調する時期が重なっています。更に2024年8月の日経平均株価急落時にも全く同様の現象が起きている点は、非常に示唆に富んでいます。
これにより、超高価格帯の不動産を購入する層、すなわち資産運用や投資活動に敏感な富裕層が、市場の一時的な不透明さを警戒し、購入を見送った、あるいは様子見に転じた可能性が高いと考えられます。
市場全体の価格トレンドへの影響は限定的
とはいえ、この一時的な成約件数の減少が、全体としてのマンション価格に大きな影響を及ぼしたわけではありません。先に述べた通り、東京都23区における中古マンションの価格は、依然として上昇トレンドの中にあり、大きく崩れる兆しは見受けられません。むしろ、富裕層による意思決定が短期的には市場に影響を及ぼしうる一方で、中長期的な視点に立てば、価格は需給バランスや都市の発展状況といった基礎的な要因に基づいて推移していることが分かります。
高価格帯市場の動向が持つ示唆
これまでのデータを総合的に見ると、2億円以上の物件の動向は、不動産市場全体の「先行指標」としての役割を果たしているとも言えるでしょう。高価格帯の物件は、一般の市場参加者よりも先に市場の空気やマクロ経済の動きを察知し、動く傾向があります。したがって、これらの動向を注視することで、今後の市場全体の方向性をある程度予測することも可能になります。
結論:中長期的な視点での市場安定性
結論として、東京都23区、特に都心3区における中古マンション市場は、引き続き高水準の価格帯で推移しており、高価格帯の成約動向にも一定の堅調さが見られます。金融市場の動向によって一時的な変動があるとしても、中長期的には都市の魅力や資産としての不動産価値に支えられた強い需要が存在していると考えられます。今後も、政策や経済環境の変化を注意深く見守りつつ、市場の動きを冷静に捉えていくことが重要です。
筆者プロフィール

福嶋 真司(ふくしましんじ)
マンションリサーチ株式会社
データ事業開発室
不動産データ分析責任者
福嶋総研
代表研究員
早稲田大学理工学部経営システム工学科卒。大手不動産会社にてマーケティング調査を担当後、
建築設計事務所にて法務・労務を担当。現在はマンションリサーチ株式会社にて不動産市場調査・評価指標の研究・開発等を行う一方で、顧客企業の不動産事業における意思決定等のサポートを行う。また大手メディア・学術機関等にもデータ及び分析結果を提供する。
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