鉄道のダイヤ改正が住まい選びに変化をもたらす？つくばエクスプレス（八潮駅）、JR内房線・JR外房線、京急本線を調査
事業を通して社会課題解決に取り組む、株式会社LIFULL（ライフル）（本社：東京都千代田区、代表取締役社長：伊東祐司、東証プライム：2120、以下「LIFULL」）が運営する不動産・住宅情報サービス「LIFULL HOME’S」は、2022～2024年の間に首都圏で実施された鉄道のダイヤ改正を受けて利便性に変化があった駅や路線に注目し、周辺の賃貸物件への問合せ数と家賃相場の動向を調査しました。
鉄道各社のダイヤ改正は、利用者のニーズに対応しながら混雑緩和や所要時間の短縮などの利便性向上を目的に実施されています。首都圏ではハイブリッドワークの拡大（※1）などにより、定期券客はコロナ禍前の8割程度にとどまっていますが、各社の乗降人員は回復しており、近年もライフスタイルの変化や利用者の増減にあわせたダイヤ改正が行われています。2022～2024年の間に首都圏で実施されたダイヤ改正で利便性に変化があった駅として、2024年3月に新たに快速列車の停車駅となったつくばエクスプレスの「八潮」、2024年3月のJR京葉線快速列車の大幅な削減により東京都心部への所要時間が伸びたJR内房線・JR外房線の各駅、2022年11月の改正で日中時間帯の乗車機会が倍増した京急本線「青物横丁」「平和島」などが挙げられます。今回は、これらの駅周辺の賃貸物件への問合せ数や家賃相場が、ダイヤ改正前後でどのように変化したかを調査しました。
※1 国土交通省 テレワーク実施状況の変化 https://www.mlit.go.jp/report/press/toshi03_hh_000128.html
つくばエクスプレス「八潮」：ダイヤ改正後、問合せ数が約20%UP！
埼玉県八潮市にある「八潮」は、つくばエクスプレスで「秋葉原」から8駅目の駅です。2024年3月のダイヤ改正で新たに快速列車の停車駅となり、運行する全ての列車を利用できるようになりました。「八潮」周辺の賃貸物件への問合せ数を前年と比較すると、2024年4-6月は前年同期比120.6%、7-9月は同119.5%と、ダイヤ改正後に問合せが増加しています。なお、「八潮」で快速列車と普通列車が接続することにより周辺駅の利便性も向上しました。
また家賃相場は、2024年1-3月の87,391円（前年同期比＋9%）が最高で、2024年の4-6月は85,925円（同＋5%）、7-9月は83,085円（同＋5%）、10-12月は84,618円（同＋4%）と4～5%の上昇傾向にあります。
2025年3月16日に実施されるダイヤ改正では、八潮始発秋葉原行きの普通列車が1本増発される予定で、利便性の向上とともに、さらなる問合せ数の増加も期待されます。
JR内房線・JR外房線：ダイヤ改正直後は問合せ数が減少するも、追加のダイヤ変更が効果を発揮？
2024年3月に実施されたダイヤ改正では、JR京葉線の通勤快速が廃止になったほか、快速列車の本数も大幅に削減されました。その結果「内房・外房地域」居住者の通勤・通学時間が20分増加（※2）するなど、京葉線に直通するJR内房線・JR外房線の利便性が大きく変化。その後、沿線自治体の要望や住民の声を受け、同年9月に一部の普通列車が快速列車へ変更されるなど、異例となるダイヤの変更が行われました。
※2 千葉市「京葉線ダイヤ改正の影響等に関するアンケート」による
◎JR内房線：ダイヤ改正直後は全駅で問合せ数が減少するも、追加ダイヤ変更後に「八幡宿」「五井」は回復
JR内房線の各駅のうち、一定以上の問合せがあった「蘇我」「浜野」「八幡宿」「五井」「姉ヶ崎」「木更津」周辺の賃貸物件への問合せ数は、ダイヤ改正直後の2024年4-6月に「蘇我」で前年同期比89.6%、「浜野」で同67.2%、「八幡宿」で同88.0%、「五井」で同89.1%、「姉ヶ崎」で同97.8%、「木更津」で同87.9%と、全6駅で前年より減少しました。
なお、その後追加のダイヤ変更（2024年9月）が行われた同年7-9月には、「八幡宿」（前年同期比109.7%）と「五井」（同113.7%）で問合せが回復。一方で「蘇我」「浜野」「姉ヶ崎」「木更津」の4駅は前年水準を下回ったままとなっています。
◎JR外房線：ダイヤ改正直後は4駅中3駅で問合せが減少。「鎌取」は前年水準を維持
JR外房線の各駅のうち、一定以上の問合せがあった「蘇我」「鎌取」「大網」「茂原」周辺の賃貸物件への問合せ数は、ダイヤ改正直後の2024年4-6月に「蘇我」で前年同期比89.6%、「鎌取」で同114.4%、「大網」で同87.3%、「茂原」で同69.2%と、全4駅中3駅で前年より減少しました。追加のダイヤ変更（2024年9月）が実施された2024年7-9月には「鎌取」「大網」の2駅で前年よりも問合せが増加しましたが、「茂原」では前年同期比88.0%となるなど、問合せ数の減少が継続しています。
京急本線「青物横丁」「平和島」：利便性の向上で、問合せ数も家賃相場もじわじわ上昇
京急本線は2022年11月に一部の「快特」を「特急」に変更し、「快特」と「特急」が10分間隔で交互に運転されるダイヤとなりました。この改正によって快特通過・特急停車駅の「青物横丁」「平和島」は、停車本数が拡大し、乗車機会が増加、利便性が向上しました。
両駅周辺の賃貸物件への問合せ数は、「青物横丁」ではダイヤ改正時の2022年10-12月は前年同月比85.9%でしたが、改正後の2023年1-3月には同144.7%に、「平和島」では改正時が同104.8%でしたが、改正後は同130.2%に、それぞれダイヤ改正を境に問合せ数が前年から大きく伸長しています。
なお、2024年に入ってからは、「青物横丁」の賃料相場が121,132円（1-3月）から135,389円（9-12月）へと11.8%上昇、「平和島」の賃料相場が94,798円（1-3月）から107,541円（9-12月）へと13.4%上昇しており、これらは両駅の所在地である品川区（3.4%上昇）と大田区（8.8%上昇）の上昇率を大きく上回っています。
考察：LIFULL HOME’S PRESS編集部 渋谷 雄大（しぶや たけひろ）のコメント
住まい選びにおいて「通勤時間」は重要な要素のひとつです。2024年春のダイヤ改正で実施されたJR京葉線の通勤快速廃止と快速の大幅削減は、混雑の平準化や快速通過駅の利便性向上といった効果があった一方で、内房・外房地域の利用者の通勤・通学時間が平均20分増加（千葉市「京葉線ダイヤ改正の影響等に関するアンケート」より）するなど、一部の利用者には大きな影響がありました。忙しい朝に家を出る時間が20分早まることは、生活者にとっては大きな負担の増加といえるほか、住まい探しユーザーから居住地として選ばれにくくなります（LIFULL「『理想の住宅立地』に関する調査」より）。特に移動に占める鉄道の分担率が高い東京圏では、その利便性が住まい選びに大きな影響を与えます。今年3月15日のダイヤ改正では、小田急線の停車駅の変更や、JR中央線快速でのグリーン車サービス開始などが予定されています。現在住まい探しをしている方は、今春のダイヤ改正後の利便性もぜひチェックしてみてください。
調査概要
調査対象：LIFULL HOME’Sに掲載された以下の駅の賃貸物件（マンション、アパート）
対象駅：つくばエクスプレス「八潮」、JR内房線・JR外房線（問合せ数が一定以下の駅は除く）、京急本線「青物横丁」「平和島」
期間：2021年1月～2024年12月
LIFULL HOME’S について（URL：https://www.homes.co.jp/）
LIFULL HOME’Sは、「叶えたい！が見えてくる。」をコンセプトに掲げる不動産・住宅情報サービスです。賃貸、一戸建て・マンションの購入、注文住宅から住まいの売却まで。物件や住まい探しに役立つ情報を、一人ひとりに寄り添い最適な形で提供することで、本当に叶えたい希望に気づき、新たな暮らしの可能性を広げるお手伝いをします。
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株式会社LIFULLについて （東証プライム：2120、URL：https://lifull.com/）
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