ラムサール条約に登録され、国内でも有数の自然が残る霧多布湿原。この湿原を守る活動をしている霧多布湿原ナショナルトラストへの助成を通じ、昨年10月に新しい自然保護地が誕生しました。

(公財)自然保護助成基金と(公社)日本ナショナル・トラスト協会が共催する「第20期ナショナル・トラスト活動助成」の助成先が、認定NPO法人霧多布湿原ナショナルトラスト(北海道浜中町)に決まりました。この助成金は、全国のNPO法人等を対象に、自然を守るための私有地の買い取り費用等を助成し、ナショナル・トラスト活動の推進を支援するものです。同団体は今期の助成金を活用し、霧多布湿原内の原野1.5haを購入しました。今回の土地取得により、周辺から迫る太陽光パネル等の開発を未然に防ぎ、貴重な湿原環境の一部を確保することができます。


■助成先
団体名:認定NPO法人霧多布湿原ナショナルトラスト
所在地:北海道厚岸郡浜中町琵琶瀬60番地
助成金額:75万円(土地取得費用、維持管理費用)
交付決定日:2024年9月24日

同団体が本助成金を活用して昨年10月に取得した土地は、霧多布湿原の南端部分に位置し、多種多様な花々が咲く15,580㎡の湿原です。住宅エリアや道路に近接し、太陽光パネル等の開発の危険性が高い場所にあります。この度の土地取得によって、こうした開発を未然に防ぎ、霧多布の原風景を未来の子どもたちに引き継ぐことができます。環境教育のフィールドとしても活用していく予定です。
■助成制度の趣旨

「ナショナル・トラスト活動助成」は、貴重な自然を守るための土地の購入費用等を助成し、地域のナショナル・トラスト活動を応援する全国でも画期的な助成制度です。希少な生きもののすみかや、将来世代に引き継ぎたい美しい風景であっても、私有地の場合は土地所有者の意向によって改変されたり、開発されたりする可能性があります。国内の重要な自然を守っていくためには、各地域で土地を確保してその自然を守るナショナル・トラスト活動の推進が急務であることから、資金を提供する(公財)自然保護助成基金と、助成金の事務局を務める(公社)日本ナショナル・トラスト協会が協力し、2005年に本助成制度を創設しました。
■第20期ナショナル・トラスト活動助成の概要
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応募期間:2024年4月~2025年3月(現在募集中。助成総額に達し次第終了)
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助成総額:500万円(1団体につき、複数年にかけて総額800万円までの助成が可能)
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助成件数:1~2件
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応募資格:法人格を有する団体(NPO法人、一般財団法人、公益財団法人など)で、地域の自然環境の保全を目的として活動している団体
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対象となる費用:
自然保護のための土地購入費用、土地賃貸費用
トラスト団体の立ち上げにかかる費用
トラスト地に係る維持管理費用
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対象となる土地:絶滅危惧種など希少な野生生物の保護や、生物多様性の保全に資する土地
■助成実績
これまで、のべ18団体に助成を行い、絶滅の危機にあるツシマヤマネコやキタサンショウウオの生息地、色鮮やかな花々が咲く阿蘇の草原などの土地取得を支援しました。



■ナショナル・トラストとは?
19世紀の英国で始まった市民運動です。豊かな自然や歴史的な環境を守るために、寄付を募って土地や建物を取得し、永続的に守る活動です。ピーターラビットの著者ビアトリクス・ポターもこの活動を支援し、湖水地方の自然を守るために多大な協力をしました。日本では1964年に鎌倉で始まり、その後、天神崎、知床、柿⽥川、トトロの森をはじめ国内50以上の地域へ広がっています。
2022年12月に開催された生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)では、2030年までに生物多様性の損失を食い止め、反転させる「ネイチャーポジティブ」を実現するために、陸と海のそれぞれ30%を保全・保護する目標、「30by30」が約束されました。ナショナル・トラスト活動は、生物多様性を守るために重要な土地を確保する取り組みで、30by30の目標達成に直結するものです。




■実施団体


詳細は助成金のサイトをご覧ください。
【お問い合わせ先】
(公社)日本ナショナル・トラスト協会
〒171-0021東京都豊島区西池袋2-30-20音羽ビル
Tel.03-5979-8031 E-Mail:office@ntrust.or.jp